2023-08-23から1日間の記事一覧
〜ひしひしと足音をさせて何かが寄って来る‥ 惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。 彼は泊まり歩く家を幾軒も持った男であったから、 使いはあちらこちらと尋ねまわっているうちに 夜がぼつぼつ明けてきた。 【第5帖 夕顔】 灯はほのかに瞬《ま…
こぼれる髪の描写が 哀しい 〜 源氏自身が遺骸を車へ載せることは無理らしかったから、 ゴザに巻いて惟光が車へ載せた。 小柄な人の死骸からは 悪感は受けないできわめて美しいものに思われた。 〈中略〉 確かにも巻かなんだから、 ゴザの横から髪が少しこぼ…
「私にもう一度 せめて声だけでも聞かせてください。 どんな前生の縁だったかわずかな間の関係であったが、 私はあなたに傾倒した。 それだのに私をこの世に捨てて置いて こんな悲しい目をあなたは見せる」 もう泣き声も惜しまずはばからぬ源氏だった。 【源…