第4帖 夕顔(ゆうがお)源氏物語
今日《きょう》から冬の季にはいる日は、いかにもそれらしく、 時雨《しぐれ》がこぼれたりして、 空の色も身に沁《し》んだ。終日源氏は物思いをしていて、 『過ぎにしも 今日別るるも 二みちに 行く方《かた》知らぬ 秋の暮《くれ》かな』 などと思ってい…
もう一人の女は蔵人《くろうど》少将と結婚したという噂を 源氏は聞いた。 それはおかしい、処女でない新妻を少将はどう思うだろうと、 その夫に同情もされたし、 またあの空蝉の継娘《ままむすめ》はどんな気持ちでいるのだろうと、 それも知りたさに小君を…
「蝋燭《ろうそく》をつけて参れ。 随身に弓の絃打《つるう》ちをして 絶えず声を出して魔性に備えるように命じてくれ。 こんな寂しい所で安心をして寝ていていいわけはない。 先刻《せんこく》惟光が来たと言っていたが、 どうしたか」 「参っておりました…
〜馬をはかばかしく御して行けるふうでもなかったから、 惟光が横に添って行った。 加茂川堤に来てとうとう源氏は落馬したのである。 失心したふうで、 「家の中でもないこんな所で自分は死ぬ運命なんだろう。 二条の院まではとうてい行けない気がする」と言…
〜ひしひしと足音をさせて何かが寄って来る‥ 惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。 彼は泊まり歩く家を幾軒も持った男であったから、 使いはあちらこちらと尋ねまわっているうちに 夜がぼつぼつ明けてきた。 【第5帖 夕顔】 灯はほのかに瞬《ま…
こぼれる髪の描写が 哀しい 〜 源氏自身が遺骸を車へ載せることは無理らしかったから、 ゴザに巻いて惟光が車へ載せた。 小柄な人の死骸からは 悪感は受けないできわめて美しいものに思われた。 〈中略〉 確かにも巻かなんだから、 ゴザの横から髪が少しこぼ…
「私にもう一度 せめて声だけでも聞かせてください。 どんな前生の縁だったかわずかな間の関係であったが、 私はあなたに傾倒した。 それだのに私をこの世に捨てて置いて こんな悲しい目をあなたは見せる」 もう泣き声も惜しまずはばからぬ源氏だった。 【源…
『夕露に ひもとく花は 玉鉾《たまぼこ》の たよりに見えし 縁《えに》こそありけれ』 あなたの心あてにそれかと思うと言った時の人の顔を 近くに見て幻滅が起こりませんか」 と言う源氏の君を後目《しりめ》に女は見上げて、 『光ありと 見し夕顔の うは露…
覆面と変装したままの逢瀬 源氏は夕顔に夢中になる(。・ω・。) 源氏は自身で、気違いじみたことだ、 それほどの価値がどこにある恋人かなどと反省もしてみるのである。 驚くほど柔らかでおおような性質で、深味のあるような人でもない。 若々しい一方の女である…
第4帖 夕顔 いろいろに咲いた植え込みの花に心が引かれるようで、 立ち止まりがちに源氏は歩いて行く。 非常に美しい。 廊のほうへ行くのに中将が供をして行った。 この時節にふさわしい淡紫《うすむらさき》の薄物の裳《も》を きれいに結びつけた中将の腰…
乳母のお見舞いの後だけど、女性のチェックは怠りない(⌒-⌒; ) 夕顔の花の女君のことを惟光これみつに調べさせる光る君 「病人がまだひどく衰弱しているものでございますから、 どうしてもそのほうの手が離せませんで、失礼いたしました」 こんな挨拶をしたあ…
「母や祖母を早く失《な》くした私のために、世話する役人などは多数にあっても、 私の最も親しく思われた人はあなただったのだ。 大人になってからは少年時代のように、 いつもいっしょにいることができず、 思い立つ時に すぐに訪ねて来るようなこともでき…