〜馬をはかばかしく御して行けるふうでもなかったから、
惟光が横に添って行った。
加茂川堤に来てとうとう源氏は落馬したのである。
失心したふうで、
「家の中でもないこんな所で自分は死ぬ運命なんだろう。
二条の院まではとうてい行けない気がする」と言った。
【第4帖 夕顔】
「もう明け方に近いころだと思われます。
早くお帰りにならなければいけません」
惟光《これみつ》がこう促すので、源氏は顧みばかりがされて、
胸も悲しみにふさがらせたまま帰途についた。
露の多い路《みち》に厚い朝霧が立っていて、
このままこの世でない国へ行くような寂しさが味わわれた。
某院の閨《ねや》にいたままのふうで夕顔が寝ていたこと、
その夜上に掛けて寝た源氏自身の紅の単衣にまだ巻かれていたこと、
などを思って、
全体あの人と自分はどんな前生の因縁があったのであろうと、
こんなことを途々《みちみち》源氏は思った。
馬をはかばかしく御して行けるふうでもなかったから、
惟光が横に添って行った。
加茂川堤に来てとうとう源氏は落馬したのである。
失心したふうで、
「家の中でもないこんな所で自分は死ぬ運命なんだろう。
二条の院まではとうてい行けない気がする」
と言った。
惟光の頭も混乱状態にならざるをえない。
自分が確《しか》とした人間だったら、
あんなことを源氏がお言いになっても、
軽率にこんな案内はしなかったはずだと思うと悲しかった。
川の水で手を洗って清水《きよみず》の観音を拝みながらも、
どんな処置をとるべきだろうと煩悶《はんもん》した。
源氏もしいて自身を励まして、
心の中で御仏《みほとけ》を念じ、
そして惟光たちの助けも借りて二条の院へ行き着いた。
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源氏の君‥夕顔を失い 悲しみに暮れる‥
なくなった夕顔はまるで眠っているようである。
源氏の紅の単が巻かれたまま😢
源氏が取り乱し、泣き、気も失わんばかりに悲しみにくれる。
人間らしい剥き出しの感情の表現。
完璧な貴公子として描かれている源氏の君が、
落馬してしまうまで 心乱れ苦しむ姿を描くことによって
一人の人としての源氏を伝えてたかったのかな(;ω;)
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